非常識な傾斜。
那須ゴルフ倶楽部へ行った。
前夜からロッジに泊まると、朝5時ぐらいに目が覚めた。まだ薄暗い中、温泉へ行く。すでに元気なおじさんたちが露天に浸かっていた。もう活気づいている。日本のゴルフ場はいいな。素直に頷いてしまう。
風呂を出て、コースへ降りる。まだ、1、2週間早い、と一緒にプレーしたメンバーは言うが、素晴らしい景色である。彼方に見える樹々は赤、黄、と鮮やかに色づいている。下界と違って空気が清冽としている。いくら吸い込んでも重くない。
「こんなところで、ゴルフやって、いいんですか」
深呼吸をしながら、正直、そんな気持ちになった。何度訪れても、朝の那須ゴルフ倶楽部(以下、那須)は神秘的な魅力がある。
しかしラウンドが始まれば、違う神秘が待っている。見た目の美しさとは裏腹に、那須のグリーンは難しい。素晴らしく仕上がったグリーンコンディションに、自然のトラップが張り巡らされている。かんたんに説明すると。
那須は、コース自体が、海抜850m〜1000mにある。そのフェアウェイからひときわ高く見える茶臼岳。グリーンはそこを背に速い。それが「絶対斜面」だ。グリーンが昇っているように見えても、茶臼から見れば下りの斜面に入っていることがある。この下り斜面が見えづらい。錯覚なのだ。昇っているように見えて、とてつもなく速い、止まらない。
この錯覚は、何度キャディに聞いても治らない。聞けば聞くほどわからなくなる。さらにキャディの言うことを考え始めると、疑心暗鬼。頭がおかしくなってくる。
得られた結論は、考えないこと。慣れるのを待つしかない。
例えば9番ホールパー4は、ティグランドからグリーンに向かって茶臼岳を左前方に見る。ピンは、その日センターやや左。グリーンは左奥から右手前に向かって速いのだから、左、奥に外すと、まず寄らない。しかし、グリーンは平らに見える。「絶対傾斜」を知らなければ、どこに外しても差し支えないように見える。それが、自然の罠なのだ。
さて、なんパットで上がったか。書く必要もないだろう。ただ、綺麗なものほど、取り扱いには細心の注意が必要だ、ということだ。
183ヤード、パー3、何番で打ちますか。
18番ホールのピンフラッグ。右に見えるのが茶臼岳。グリーンの傾斜は二の次。まず茶臼岳の位置を確認する。
14番ホールティグランドからグリーン方向を見る。せせらぎの流れるパー4は、次の15番と合わせて、井上誠一の傑作だろう。素晴らしいの一言。









