非常識な欠伸。
美人が、電車の中でいきなりアクビをした。アーア、と声までは聞こえなかったが、大きな口だった。
人は誰でもアクビをする。自然現象というか、生理現象である。人の口をいきなり、それも思いっきり開けさせるのだから、アクビには相当の力がある。そして、場所を選ばない。電車の中はもちろん、ゴルフ場でも、結婚式場でも、アクビは起こる。わざわざ人前でアクビをしたいという人はいないだろう。出てしまうのである。生理現象とはいえ、非常識なものだと思う。
眠いとき、飽きてしまったとき、アクビは突然、人の口から現れる。授業中、つまらない会議は、格好のアクビ・シーンである。アクビは自分にとっては、案外気持ちのいい行為かもしれない。しかし、人に不快な印象を与えることも多々あるので、気をつけたい。大切な話を真剣にしている横で、大きな口を開けて「アーア」とやられれば、誰だって気は抜けるし、腹も立つ。大切なパー・パット、アドレスに入った人の脇で「アーア」とやる非常識はいないだろうが、入るものも入らなくなる。
生理現象が、いまの自分を的確に、これほど素直に表現してしまうのだから、アクビは怖い存在である。クシャミ、放屁も人前では憚られる生理現象だが、アクビとは、いささかニュアンスが違う。
猫も、犬も、なぜかアクビをする。彼らも毎日に飽きて、眠く、酸欠なのだろうか。でも、生き物がなぜアクビをするのか、恐らく深く研究している医学者もいるのだろうが、本当の理由と原理はまだわかっていないらしい。
考えてみれば、子供の頃から変わらず、ずっとしているのだから、アクビとは、付き合いが長い。古い友だちのようでもある。アクビは、欠伸と書く。これもヘンな漢字である。伸びを欠く、と読める。確かにそういう感じの時に出るような気もするが。誰かのゴルフを指摘しているようでもあり、ヘッドスピードの上がらない、友人のドライバーショットを笑っているような漢字にも見える。
この間、同伴競技者が、やや昇りの155ヤード、パー3をアゲインストにも負けず、高い弾道で乗せた。その人にとって、この日のゴルフは、まさにアクビの出るような展開、散々であった。うまくいかない日は誰にでもある。しかし、実測165ヤードに近い距離を綺麗な球筋で乗せた。溜飲が下がったのだろう。打ったクラブのソールをグイと、こっちに向けている。最初、6のように見えたクラブは、よく見れば9であった。
アクビが止まった。eggの9番だった。(マロンさん、ナイスショット!)
165ヤード、何番で打ちますか。

フェアウェイにグリーンが戻ってきた。やはりゴルフはグリーンの中で楽しみたい。嵐山カントリークラブにて。

藤棚がティグランド脇にあった。丈はやや短いが、綺麗に咲いていた。私たちの気持ちを代弁するかのように、花のまわりを蜂がうれしそうに羽音を鳴らしながら飛び回っていた。













